鏡に映ったわたしのコートは、お気に入りのブローチをしていませんでした。
ない、ない。ほんとにない。どこにもない。
なんでないんだろ。どこでなくしちゃったんだろ。どこで落としちゃったんだろ。
どうしてわたしのコートは落としちゃったのに気付かなかったんだろ。
銀色のブローチ。バイオリンの形をしたブローチ。
わーん! わたしのかわいいバイオリンちゃん、いいこだからでてきてちょうだい。
歩いた道を戻っても、ない。ない、ないよね。
落ちたら音がするもん。音なんて聞いてないもん。
ない、ない……。
マシュマロを入れたココアもおいしくない。
悲しい。